IABのレポート「Outlook 2022: The US Digital Advertising Ecosystem」によると、広告に絡む低質なメディア体験を避けるようとする動きが消費者の間で高まっているようです。メディア取引に関わるあらゆるマーケターは、持続的な収益拡大を図る上でも、より文脈に即した体験を提供し、可能な限り最高の広告体験でユーザーに働きかけることが求められます。
これについて押さえておくポイントは…
- 2021年第4四半期のモバイルデバイスによる Web トラフィックは55.4%で、次いでラップトップとデスクトップが41%、タブレットやその他のデバイスが約3.5%でした
- 消費者は平均4.8時間(1日の全体活動時間の3分の1)を自らのデバイスに費やし、そのうちの9割をアプリ内で過ごしています。テレビ視聴を上回る水準です
消費者がモバイルデバイスで過ごす時間は以前に増して長くなり、その大半の時間はアプリに費やされています。つまり、できるだけ多くのユーザーにリーチしたければ、これらの両面でユーザーに働きかけ、それぞれの長所をとらえてマーケティングキャンペーンの効果を高める必要があります。
それぞれの特徴
ディスプレイ広告とアプリ内広告には、いくつか共通する特徴があります。たとえば、どちらも、リッチメディア、動画、その他のインタラクティブな広告など、同じようなコンテンツを表示することができます。最大の違いは、モバイルデバイス上で広告がどのように・どこで体験されるか、そしてユーザーをどのようにターゲティングしてリーチするかです。
従来型のディスプレイ広告-ブランド認知を構築する
「ディスプレイ広告」という用語は概ね、検索結果の一部やウェブサイト内で表示される「従来型」の表示の広告を意味します。
たいていは、クリックでダウンロード、電話、SMSなどを通じた広告主へのコンタクトを誘導するバナーの形式が多いですが、ほかのフォーマットもあります。ほかには、ウェブサイトに表示されてホスティングサイトやプラットフォームに溶け込む形になるネイティブ広告、同じくネイティブ広告でも特定のコール トゥ アクション(行動喚起)を含むことの多いソーシャル広告などもあります。ソーシャル広告は、通常はユーザー層や地域、検索履歴などに基づいて特定のオーディエンスに対象を絞っているため、ターゲティングないしリターゲティングを行うことができます。
ディスプレイ広告では通常、トピック、関心、ユーザー層(年齢、子どもの有無など)、文脈キーワードなどのデータを基にターゲティングが行われるほか、検索履歴やウェブ履歴などに基づいてユーザーが訪問したサイトに広告を集中させるプレースメント戦略がとられます。キーワードターゲティングは、キーワードに基づいてユーザーを定義しますが(例えば、「ランニングシューズ」と入力して検索しているユーザーをターゲットとするなど)、効果が生まれるまでには時間を要します。トピックやユーザー層に基づくディスプレイ広告、例えば「テニス」などといった特定のトピックや一定の年齢層などをターゲットとする場合は、概して対象が幅広くなり、ファネル内でより上位に位置することとなります。
興味に基づくディスプレイ広告のターゲティングは、特定の商品やサービスを頻繁に検索しているなど、より深いユーザーデータに依拠します。
アプリ内広告-ユーザーが最も長く時間を費やすところに働きかける
アプリ内広告は、フィットネストラッカーやゲーム、ニュースなどあらゆるモバイルアプリの中で表示されるように設計されています。したがって、通常はアプリとそのユーザーに基づいてターゲティングが行われるため、より整合したターゲティングが可能になります。たとえば、フィットネスアプリやランニングアプリで、運動用のシューズの広告を配信することができます。
アプリ内広告は、こうして広告にエンゲージして関与する可能性の高いオーディエンスにより的確にターゲティングできるだけでなく、従来のディスプレイ広告で起こりがちなバナーブラインドネス(ユーザーが無意識にバナー広告を無関係なものとして無視する)を回避することができるという点でも優れています。たとえば、動画リワード広告では、ユーザーが広告を視聴することと引き換えにゲーム内通貨を無料で提供するといったことができます。インタースティシャル広告は、アプリ内の自然な「合間」に表示され、アプリ内の体験を過度に損なうことなく、状況的に適切な広告を表示することができます。
またアプリ内広告は、ユーザーが最も時間を費やす部分を狙い撃ちしてより正確でポジティブな、関心を得やすい体験を提供できるだけでなく、アプリ一覧とインベントリをしっかりと確認している限り本質的にブランドセーフティが確保できる点も優れています。一方で、従来型の一般的なディスプレイ広告は、望ましくないコンテンツに隣接して表示される可能性があります。たとえば、ハイパーカジュアルゲームなどで突如として物議を醸すようなニュースが表示されることはありません。
こうしたなか、ブランド認知の向上に取り組む広告主にとって、キャンペーンの成果を測定する上でビューアビリティが大きな存在であることも事実です。この点において、これまでは断片的であることやアプリ内の体験が十分に効果的でないことが課題でした。しかし今では、ALX が提供する OM SDKのサポートによって、ブランドを押し出すキャンペーンを自信を持ってアプリ内で展開し、閲覧完了率やビューアビリティなどの点でディスプレイ広告より優れたパフォーマンスをさまざまなチャネルで安定的に計測することができます。
二本立てのアプローチ
ここ数年は従来型のディスプレイ広告は終わったとの指摘も聞こえますが、これはフォーマットの問題というよりもむしろ低質な広告が主な原因と考えられます。広告ブロッカーやポップアップブロッカーがディスプレイ広告を一部の人々が危惧していたような破滅に追いやるようなことにはなりませんでしたし、ディスプレイ広告は依然として有効なトラックとなり得ます。
現在では、従来型のディスプレイ広告によるキャンペーンは、ブランド認知構築に重点を置くものが増えているようです。モバイルファーストのアプローチを据えつつ質の高い広告を制作しているのであれば、ディスプレイ広告を完全に無視する必要はありません。
ただ、アプリ内広告は、ユーザーが最も時間を費やす場所、つまりモバイルデバイスとお気に入りのアプリの中でユーザーにリーチすることができる手段です。現時点で従来型のディスプレイ広告への依存度が高い、あるいはアプリ内広告の導入を迷っているといった状況であれば、今こそ行動を起こすタイミングです。
ディスプレイ広告とアプリ内広告を併用してうまく使い分ければ、ディスプレイ広告で幅広くブランド認知を高める一方で、アプリ内広告によってユーザーが最も時間を費やすポイントで潜在顧客にリーチすることができ、よりパワフルかつ効果的なキャンペーンを効率的に行うことができます。