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ハリーポッター vs ポケモン、Niantic の AR ゲーム対決が始まる

Nori Hayashi
3月 15日, 2019
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Pokémon GO は2016年にリリースされて爆発的な人気を得ましたが、その後3年にわたって人気が続いたのは予想外でした。だれもが当然のように、一時のブームで終わると思っていました。モバイルゲームの世界では人気の移り変わりが速く、別のゲームのブームと共に古いゲームの人気は衰えるのが一般的です。しかし Niantic のメガヒットであるポケモンGOはこうした常識を破り、直近でも世界で30億ドル超の売り上げを記録しています。

継続的に大きな成功を収めている Pokémon GO の地位を奪えるようなゲームは現れるでしょうか?それはもしかしたらNiantic の新タイトル「ハリーポッター: 魔法同盟」(Harry Potter: Wizards Unite) かもしれません。

 

Pokémon GO の大ヒット

人気の衰えない Pokémon GO ですが、2016年のリリース当初のレビューは、賛否両論ありました。指摘の多くは技術的な問題で、徐々に改善されていきました。2018年5月までのダウンロード数は8億件超で、月間アクティブユーザー数(MAU)は1.47億人です。驚異的なリテンション率です。

成功のカギはファンサービスの多様性と強力なコミュニティでしょう。まず、キャラクターを「全種類捕獲する」という強力なコンセプトがあります。キャラクターを捕獲するまでの道筋をプレイヤーが披露するロケーションベースのゲームの醍醐味が広く一般化しました。

タイミングも成功のカギとなりました。リリースは2016年の夏で、老若男女の興味を引くことができました。まず、学生は自由な時間が多い季節でした。また、より高い年齢層では、日が長く気候が良い季節に、ポケモンで遊びながらエクササイズになるという魅力が受け入れられました。ユーザーが一度はまってしまえば、冬の数字悪化はそれほど激しくなりませんでした。

サーバーのパンクでユーザー体験が損なわれないように、Niantic が慎重に段階的なリリースを行ったことも奏功しました。若干の大きな問題もあったりと完全にうまくいったわけではありませんが、期待感を高める効果はありました。ポケモンGOは世界中に広まりました。それはゲームの性質上文字通り地理的に広がっただけでなく、当時のクリントン大統領候補がコメントするなど、メディアでも世界的な話題になりました。Pokémon GO の人気を打破するのがかなり難しいのは明らかです。

 

有名 IP 対決

ハリーポッターとポケモン、より人気で成功しているのはどちらでしょうか?その認識は人によって様々で、難しい質問かもしれません。両方のファンだという人の数を知ることはできませんが、ハリーポッターは映画シリーズ累計売上高3位、ポケモンはテレビゲームシリーズ累計売上高2位です。どちらもメディアで大きな存在感を放っているのは間違いありません。また、どちらのIPも何時間でもその魅力について喜んで語り続けるような熱烈なファンが多くいます。こうしたファンは、拡張現実(AR)のゲームを通じてその世界観に没頭するのを間違いなく楽しめるはずです。

一方でそれぞれのシリーズには独自の強みと弱点があります。

 

Pokémon Go の強み、開拓者で先発であること

扉を初めて開く存在であることは、モバイルゲームの世界では強みとなります。Pokémon GO はしっかりと自らの存在を確立してきました。2016年7月のリリース以来、プレイヤーの生活の一部となっていて、たとえそのファンの一部がかなりのハリーポッター好きだとしても、その多くは Pokémon GO から離れることはないでしょう。

Pokémon GO は毎日の習慣の1つで、無視するのが難しいような存在になっています。結局のところ、すでに1つのゲームに数百時間もの時間を費やした人が、それを脇に置いてほかの似たようなゲームに鞍替えするのは難しいかもしれません。ゲームに課金している人ならなおさらかもしれません。

 

「ハリーポッター: 魔法同盟」:さらなる進化が期待される

Pokémon GO はNianticが初めてリリースしたARゲームというわけではありません。初めてのARゲームタイトルは2013年にリリースしたIngressで、有名なキャラクターを登用したものではなくオリジナルのSFストーリーのゲームでした。ゲームの仕組みは Pokémon GOと共通していますが、有名なキャラクターやゲームプレイの精妙さなどはありませんでした。それでも当時はダウンロード数2,000万件と成功を収めましたが、Pokémon GO の爆発的なヒットとは雲泥の差です。

Nianticの基本的な戦略は、過去の成功・失敗から学び、ゲームを改良することです。着実な反復によって、理論上、新しいプロダクトは少なくともより洗練化・凝縮化されたものになります。これを踏まえると、ハリーポッター:魔法同盟の利点が浮かび上がります。

Pokémon GO が初見で直感的なゲームでないことはすでに実証済みの事実です。新たなユーザーを取り込むうえで、よりうまく行なっているモバイルゲームは他に多数あります。オンラインで Pokémon GO の攻略法を見ることはできますが、特にカジュアルプレイヤーはゲーム内に情報を全て集約してほしいはずです。

この点で、ハリーポッター:魔法同盟は過去の失敗を修正する良い機会であり、わずかな改善で長期の展望を押し上げられるかもしれません。ハリーポッター:魔法同盟については、「2019年」という大まかなリリースタイミングが分かっているだけで詳しいことはほとんど知られていません。ただ、Niantic が AR のスタートアップ Escher Reality を買収したのを受け、Pokémon GO を超えるテクノロジーが強化され、AR 空間に永続性が増すかたちになるのではと噂されています。

 

ポケモンとハリーポッターが共存する可能性は?

ハリーポッター:魔法同盟がクオリティ面で Pokémon GO に並ぶ、あるいは超える可能性はありますが、カギはクオリティだけではありません。より重要なのは、ユーザーがどちらもプレイする余地があるかどうかです。ただ、ファンのロイヤルティが強いこのタイプのゲームでは難しいと考えられます。

Pokémon GO を試したけれどもすぐに離れていったプレイヤーの数に目を向けると、もしかしたらハリーポッター:魔法同盟の成功が視野に入るかもしれません。 Pokémon GO のローンチから数カ月中の報道によると、ローンチ以来79%のプレイヤーを失っているようです。爆発的なヒットを思えば痛々しい事実というほどではありませんが、こうして離れたプレイヤーの理由を理解するのは興味深いところです。このタイプのゲームが合わなかったというユーザーもいるかもしれませんが、ポケモンのストーリーに魅力を感じなかった場合もあるかもしれません。あるいは、扱いにくいゲームの仕組みで混乱してしまったユーザーもいるかもしれません。こうしたユーザーは、ハリーポッター:魔法同盟に取り込める可能性があります。

Pokémon GO のユーザー層を示す新しい統計はなかなか見当たりませんが、2016年当時、Adweek report によると、コアのユーザー層は21~27歳台で、このうちモバイルにインストールしているのは女性で29%、男性で43%でした。ハリーポッターのファン層の情報も特定しにくいのですが、多くのファンは20代と考えられます。全ての20代がポケモンもハリーポッターも好きということはまずありません。Niantic はおそらく、 Pokémon GO で獲得し損ねたユーザーを再び取り込みつつ、ハリーポッターファンだけれども「キャラクター捕獲」のコンセプトに興味のない層を取りこぼさずに囲い込めるように取り組むでしょう。両者は異なる別のフィクションの世界です。ポケモンのファンはビデオゲームやアニメ、日本文化に魅力を感じる層が多く、ハリーポッターファンは読書とファンタジーが好きな層が多くなっています。

ゲームの仕組みは似ている可能性がありますが、Niantic は2つのゲームの世界観については異なるアプローチを取るでしょう。その世界感が、新たなオーディエンスを獲得する上での違いにつながるはずです。

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