昨年12月、インドのスマホ市場にフォーカスした記事に多くの反響をいただきました!海外市場シリーズ第2弾として、今回はベトナムとアルゼンチンの市場状況をお伝えします。
ベトナムとアルゼンチンは、優秀な人材や通信環境を確保することができれば、アプリ市場の構築を目指すのに適した地域です。
両国とも政府や企業がモバイルへの投資を進めており、それぞれの国のアプリ市場の安定性がうかがえます。両国では市場の国内総生産(GDP)への寄与度も拡大しており、アプリ産業がマクロ経済の一翼を担っているのは明らかです。今回の記事では、ゲーム、ショッピング、決済の分野に焦点を当て、ベトナムとアルゼンチンのユーザー行動の特色を紐解いていきます。
データをざっくり見渡すと分かるのは、ベトナムのアプリはゲームが主流である一方、アルゼンチンはソーシャルメディアとショッピングが中心になっている点です。ユーザーのスマホ活用方法は、それぞれの国で大きく変わります。
現金志向のベトナム
多くのマーケターを悩ませるベトナム市場の特徴は、掴みどころのないユーザー行動です。特に18~35歳の女性は、スロットからカジュアルゲーム、eスポーツまで幅広い分野のスマホゲームを楽しんでいます。
ユーザーはスマホを決済手段として完全には信頼していないかもしれませんが、消費者として使用する中で、徐々に拒否感は薄れてきているようです。こうした流れの中、Lazada(iOS / Android)や Shopee(iOS / Android)のような現地で人気のアプリが、アパレルや食品、電化製品、化粧品を購入するショッピングアプリとして信用を得始めています。
Source: Vietnam Briefing
ベトナムでは様々なスマホ決算手段が溢れていますが、現地でこの分野を伸ばすカギは、手段の選択肢を増やすことではなく、まずはあらゆる取引で現金取引を好むベトナムの決済行動の近代化を後押しすることでしょう。
電子決済は一般に広まりつつありますが、デビットカードやクレジットカード、モバイルウォレットへの関心が薄く、スマホ決済の普及はスローペースです。現在、スマホ決済市場はあまりにも多くのプレイヤーで飽和状態であるため、決定的な手段が確立しにくい状況です。
アルゼンチンとスマホ決済ブーム
アルゼンチンの状況はまた異なります。アルゼンチンにおけるスマホ決済市場は、まさに現在進行中で成長しています。
アルゼンチンでは、国家主導の経済再生の一環として、デジタル/スマホ決済インフラの確立が重要視されています。またアプリ市場は、2020年までに国内で6.5万~8万人の雇用を創出すると期待されています。現地のコンテンツやアプリ開発がこうした流れの一助になっている側面もあります。中南米のモバイルコマース大手の MercadoLibre、ソフトウェア開発企業の Globant などが、成功例としてあげられるでしょう。
アルゼンチンのスマホ普及率は 2008年から 100%になっています。なかでも女性は特にPCを利用せず、スマホのみを使用するユーザーとなっている傾向が強いようです。不安定な回線スピードに悩まされることが多いアルゼンチンですが、だいぶ改善されてきています。データを見ると、インフラの改善に伴い、モバイルデータのトラフィックは2015~19年にかけて、平均成長率が49%になると期待されます。
こうしてトラフィックが伸びることで、2012年から拡大している ARPU (Average Revenue Per User: 1ユーザー当たりの平均売上高)も押し上げられるはずです。アルゼンチンのユーザー1人当たりのスマホ利用時間は長く、世界でも上位に入ります。ベトナムのようにゲームも好まれていますが、それよりもソーシャルアプリが絶大な人気を誇っています。
信頼を背景に、スマホ決済の利用は増加するでしょう。そうなれば、銀行に口座を持たない多くのユーザーの間で、スマホファーストの消費が拡大するはずです。こうしてアルゼンチンで特徴的なスマホ決済の形が構築され、ほかの新興国がその経験に続くようになるでしょう。
ベトナムとアルゼンチン両国の強みに合わせ、スマホ市場を成長に導く戦略がそれぞれあるはずです。
現地のゲーム熱をとらえることの重要性
ベトナム市場のマーケターやパブリッシャーにとっては、現地ユーザーのゲーム熱を把握することが、スマホ収益拡大のカギといえます。無料、有料に関わらず、カジュアルゲームの人気は絶大です。また、eスポーツも急成長しています。それらの収益の大部分は広告によるものなので、質が重要になります。1回またはある程度のゲームプレイが繰り返された後にスキップ可能な動画を挿入するなど、プレイヤーとのタッチポイントを最大化しつつ、最適なユーザー体験を維持することが大切です。
アルゼンチンのスマホ市場の展望は明るいですが、既存の課題解決、つまり、銀行口座を持ったことのないユーザーに向けて、モバイル決済を簡単なものにすることが、ゴールへの近道でしょう。アルゼンチンの人口は4,000万人程度と巨大ではありませんが、スマホはかなり普及していて、実際にスマホ市場への具体的な投資も見られる国です。また、メキシコやブラジルなどほかの中南米地域へ参入する足がかりとしても最適です。
ユーザーの興味はゲームやメッセージ、ソーシャルメディアなどのカジュアルアプリが中心ではありますが、アプリ内でのスマホ決済を加速させ、プログラマティック広告を充実させる革新的な取り組みが、両国のアプリ市場を一段と飛躍させるでしょう。