いくらアプリの広告やアプリストアのページが最適化されていて、新規ユーザー獲得が安定的に維持されていたとしても、オンボーディングのプロセスが良くなければ、獲得したユーザーのほとんどを素早く失うことになるでしょう。平均でアプリは、インストール後3日以内に1日あたりのアクティブユーザー(DAU)の77%を失うと言われています。そして30日以内には90%、90日以内には95%以上のDAUを失うことになります。
そのため、アプリのユーザー離れを防ぎ、ユーザーを維持するにはオンボーディングが的確である必要があります。
オンボーディングとは?
オンボーディングとは、ユーザーにアプリをできる限り簡単に理解、体験、開始してもらうことを指し、アプリとユーザーの関係の始まりとなるプロセスです。オンボーディングプロセスで、新規ユーザーに素早くアプリの魅力を伝え、起動させなければ、リテンションは低下してしまいます。
しかし、ユーザー離れを防ぐためのコツはいくつかあります。UX Magazineは、適切なユーザーオンボーディングを導入したところ、ユーザーリテンションが50%増加したそうです。
的確なオンボーディング体験を実現するには?
オンボーディングは、シンプルでわかりやすい UI によって、スムーズでスピーディーな体験であるべきです。良いオンボーディング体験とは、アプリの価値を示し、新しいユーザーにアプリの機能や利点を伝えること、そしてゲームであれば、ユーザーにゲームの遊び方を教えることです。
オンボーディングの種類
オンボーディングプロセスは、さまざまな種類がありますが、一般的には、以下に定義されたカテゴリーのいずれか、または複数に分類されます。
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- プログレッシブ — ユーザーがアプリを操作している間に新しい情報を表示します。情報やガイダンスは、ユーザーが閲覧しているアプリ内のページに関連している情報のみが表示されます。
- 機能— 基本的な機能や特徴をデモンストレーションすることで、ユーザーにアプリの使い方を説明します。
- ベネフィット — コンバージョンを高めることを目的として、アプリの利点や価値を示します。アプリの使い方を詳しく説明することなく、アプリが何をするものかを説明します。
オンボーディングのテクニック
機能よりアプリの価値を重視する
具体的な機能について踏み込む前に、ユーザーにとってのアプリの価値を示しましょう。単なる機能説明ではなく、その機能がユーザーにとってどう役立つか、に重点を置くことをお勧めします。
例:
「この機能で、複数の販売サイトからの航空券の価格を検索できます」よりも、「航空券の最安値を検索できます」というような説明の方が説得力があるでしょう。
最も重要な機能にフォーカスする
ユーザーにアプリの価値を示したら(上記参照)、次にそれを実現するために、機能を理解してもらう必要があります。そのためには、コールアウトを使ったり、UIの要素(ボタンなど)を強調したりして、機能の使い方をガイドします。
ただし、オンボーディングではくれぐれも情報を多くしすぎず、ユーザーが納得したアプリの価値を実現するために必要な、最も重要な機能にとどめましょう。また、アプリ内メッセージなどを使用して、新機能や重要度の低い機能について伝えることもできます。
権限リクエストにはご注意
多くのアプリは、メッセージ、位置情報、写真の共有などのためにアクセスが必要です。そのため、アプリがこれらのデータにアクセスできるようユーザーに権限をリクエストする必要があります。個人データへのアクセスを要求する際は、慎重なアプローチで行いましょう。調査によると、60%のユーザーが、個人情報(この場合は正確なGPS位置情報)を提供しなければならないと知ったときに、アプリをインストールしないと決断したそうです。
さらに、アプリが正しく動作するために権限を必要とする理由をより明確に示しましょう。Android デベロッパーガイドによると、 Android の一般的な権限要求「requestPermissions() 」を呼び出す前に、アプリが権限を必要とする理由をユーザーに説明するのが良いそうです。調査によると、ユーザーは、アプリが許可を必要とする理由を知っていれば、権限リクエストを快く受け入れるようになることがわかっています。
また、初めは必要な権限だけを要求し、重要ではない機能に関しては、ユーザーがアプリを利用し始めた後に権限をリクエストすることをお勧めします。
オンボーディングは素早く、明快に
オンボーディングは必ず早く、かつ合理的なプロセスであるべきです。オンボーディングの体験が長くて細かいものであればあるほど、途中でユーザーを失う可能性が高くなります。テキストよりも、ビジュアルを通して説明することが大切です。説明文は1つの画面にとどめましょう。
また、カメラや共有ボタンなど、スマートフォンの基本的な使用方法の説明に時間をかけないようにしましょう。アプリが OS の標準的な操作方法に従っている限り、OS の一般的な機能は説明する必要はありません。
また、上記のようなプログレスインジケーターを配置すれば、ユーザーは明確に「残りいくつステップを踏む必要があるか」を把握でき、安心感を得られます。
サインアップの手順はシンプルに
サインアップとアカウント作成は、ユーザーを維持するための最初の障壁になることが多いので、複雑にしすぎないようにしましょう。可能であれば、Facebook や Google などの既存のソーシャルメディアアカウントからユーザーがサインアップできるようにするのをお勧めします。これにより、数回のクリックで簡単にサインアップができ、ユーザーとの信頼関係を向上させることができます。
それを踏まえ、メールアドレスとソーシャルログインなど、さまざまな登録方法をテストすると良いでしょう。
また、サインアップをオンボーディングプロセスの最初に配置する必要はありません。サインアップを求めるタイミングを変更してテストすることもできます。アプリによっては、オンボーディングプロセスを開始する前にサインアップが必要なものもあれば、サインアップを最後にするもの、あるいは全く不要なものもあります。
CTA を忘れずに!
ユーザーがオンボーディングに成功したら、プロセスの最後に Call to Action(CTA)を追加して、すぐに次のステップを提供することをお勧めします。これにより、ユーザーがすぐにアプリを使い始め、エンゲージメントを高めることができます。