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2019年のCESで見えた5つのモバイルトレンド

Nori Hayashi
2月 7日, 2019
AppLovin-ces-2019-trends

2019年を迎え早くも1ヶ月経過しましたが、今年はどのようなモバイルトレンドがくるのでしょう。

今年も年明けに、世界最大の家電見本市「CES」(Consumer Electronics Show) が開催されました。CESでは、あらゆるテクノロジー企業が毎年、米国ラスベガスに集結してそれぞれの最先端の製品を出展します。より幅広いテクノロジーの世界で、近い未来に何が期待されるのかを垣間見る素晴らしい機会です。

CESはモバイルにフォーカスした見本市ではありませんが、各企業が出展するテクノロジーは今後のモバイルのエコシステムの行方の手がかりになります。今回はモバイル業界にインパクトを与えそうな、CES 2019で見えた5つのトレンドをご紹介します。

 

Appleがサービス企業へとシフトしつつある

AppleはこれまでCESには参加せず、自前の新製品発表会を開いています。これが今年やや変化しました。出展こそしなかったものの、CES会場近くの巨大な野外広告でiPhoneのプライバシー機能をアピールし、大きな存在感を示しました。また、AppleはCES開催期間中にいくつかの発表をしました。近い将来、AirPlayとHomeKitをテレビメーカーに対してオープンソース化すること、そして一部のテレビでiTunesのコンテンツを見られるようにすることを明らかにしました。

消費者にとってすごくエキサイティングな発表とは言えませんが、Apple の今後の方針を示唆する意味では重要です。AppleのiPhone事業が苦戦し、減産や下取りによる値引き戦略を余儀なくされ、「割安感のある」iPhone XRのマーケティングを強化しているのは周知の通りです。iTunesをテレビにプリインストールする方針は、自社のApple TVのセットトップボックスが競合には追いつけないと認めたようなものです。

Appleを長年にわたって支え、世界的な大企業の1つにまで成長させたのはiPhoneの存在です。そのiPhoneが不調な中、Appleは大転換期を迎え、Apple MusicやiCloud、Apple Pay、Mac、App Storeといったサービスの強化を図っています。Appleが昨年、Apple MusicをAmazon Echoで使えるようにしたことは驚きを持って受け止められました。Appleはこのほか、自前のテレビサービスの開始に取り組み、オリジナルコンテンツの制作に大規模な投資をしています。ホリデーシーズンにはApp Storeの売上高が過去最高を記録しており、Appleが以前よりもサービス分野に注力する理由は明白です。

モバイル業界に絡むポイントは、iPhoneユーザーが同じ機種を持ち続ける期間がより長期化し、Appleがもはや2年サイクルのユーザーの機種変更に期待することができなくなっている点です。Appleは対策としてiPhone事業をサービスの1つとして組み込み、iPhoneのリースを開始する可能性すら考えられます。Appleはすでにアップグレードプログラムを導入していますが、現行は第三者の金融サービスを通じて行っています。このプログラムをAppleが自社で行い、ユーザーの加入を促す特典を増やす可能性かもあります。

 

バーチャルアシスタントの分野はGoogleとAmazonの一騎打ち

CES 2019のバーチャルアシスタントの分野は、AmazonとGoogleの存在感が圧倒的でした。それぞれの音声サービスをサポートするあらゆる製品が出展されていました。AmazonのAlexaに対応する製品は数百万とあり、7,000ドルのトイレまでありました。Google Assistantをサポートする製品も、あらゆる生活分野でみられました。Amazonに対抗するGoogleは、ディズニーの「イッツ・ア・ス モール・ワールド」を再現するGoogle Assistantのアトラクションを会場に設置しました。

消費者にとっての朗報は、どちらのバーチャルアシスタントにするか決める必要がないことでしょう。多くのスマートスピーカーのメーカーは、両方のアシスタントに対応しています。モバイルの分野でも、今後益々音声アシスタントに絡む戦略が重要になるでしょう。また、スピーカーの操作は音声によって行いますが、操作に対するアウトプットは音声あるいはビジュアルどちらで反応するのかなど、ユーザーへのベストな提供方法を検討する必要があります。

さらにGoogleは、バーチャルアシスタントの新たな機能を発表しました。Google Assistantでは間もなく、飛行機のチェックインが可能になり、搭乗券の発行や座席のアップグレードが音声だけでできるようになります。このほかにGoogleは、他言語の人との会話を逐次通訳でサポートする通訳モードの機能搭載も発表しました。

AppleはHomeKitのオープンソース化を発表しましたが、CES 2019でSiriの存在感はあまり感じられませんでした。MicrosoftのCortanaとSamsungのBixbyに至っては存在感はほぼゼロのようでした。これまでのところ、バーチャルアシスタントの世界はAmazonとGoogleの一騎打ちになっているようです。

 

ディスプレイ技術の進化がスマホとタブレットのデザインの流行を生む

スマートフォンのデザインは2018年、ディスプレイ上部のノッチの流行に乗る製品を各社が発売し、停滞気味でした。新たなモバイルの革新は、モバイル体験をさらに向上させるようなディスプレイに秘められているかもしれません。CES 2019では、折りたたんだり丸めたりできるディスプレイが注目を集めました。LGは丸められるテレビを、Samsungは折りたたみ型スマホGalaxy Fを発表しました。

Samsungは、自社のGalaxyに加えてiPhone XsとPhone Xs Maxの有機ELディスプレイ(OLED)を曲げられるようにし、スマホ市場を前進させました。折りたたみ可能なGalaxy Fで、再びスマホデザインの革新の扉を開こうとしています。

折りたたみスマホが受け入れられるかどうかは未知ですが、変革をもたらす可能性はあります。ラップトップPCに代わるような折りたたみ可能な端末をタブレットメーカーが開発すれば、停滞気味のタブレット市場が再び活性化するかもしれません。プロセッサが極めてパワフルなAppleのiPad Proが、今のところはラップトップの代替に最も近い機器です。Mac OSを搭載した折りたたみ可能なiPadを想像してみてください。タブレット市場が大きく揺れ動くはずです。

OLEDの技術が折りたためるスマホの道を開いていますが、次に来るのはマイクロLEDかもしれません。マイクロLEDは微細なLEDをディスプレイ全体に敷き詰める新たに開発中の技術です。OLEDのあらゆる利点を維持しつつ(漆黒、コントラスト、省エネ、レスポンスタイムの速さ、輝度)、欠点(寿命、焼き付き、白色の不鮮明さ)を克服します。こうしたディスプレイ技術はまずはテレビから始まりますが、いずれはOLEDのようにスマホにも流れるでしょう。

 

注目の5Gだが、本格化するまでにはまだ数年

AppLovinでは以前に5Gがモバイル業界とモバイルゲームにもたらす革新を考えましたが、本格化するにはまだ数年かかるでしょう。CES 2019ではあらゆる5Gの可能性が紹介されていましたが、まずは乗り越えるべき重大なハードルがいくつかあります。

最大の問題は、不安定なローンチやマーケティングです。米通信大手AT&Tは1月、4Gサービスの提供を継続中にもかかわらず、ユーザーのスマホに「5G E」のアイコンを表示し始めました。同社は3Gから4Gへの移行の際にも同じようなことをしており、意外なことではないかもしれません。2019年は、消費者が実際に5Gネットワークにアクセスする初めての年になるでしょう。足元では5Gの最初の波がスマホに訪れるのを待ち構えているような状況です。Appleは次のiPhoneに5Gを採用しないと報じらています。同社は新技術が成熟するまでは飛びつかない傾向があり、不思議なことではありません。

このほかの問題は、5Gの周波数の一部が建物内に届かないことです。電波塔を各所に増やす必要があるということになります。都市部では可能かもしれませんが、地方のユーザーは5Gに接続できるまでしばらくかかるかもしれません。

5Gでモバイルユーザーのコンテンツとの関わり方が変わり、スマートデバイスによるインターネット接続が拡大するのは間違いなさそうですが、次世代のネットワークのインパクトを実感するまでにはまだインフラの確立を待つ必要があるでしょう。

 

VRは静かなまま

2013年にOculusの開発キットが最初にリリースされて以来、VR(仮想現実)の進化が待たれる状況ですが、この分野には盛り上がりが感じられないままのようです。HTCがVive Pro EyeでVRヘッドセットの主力製品に視線追跡を追加するなど、一定の進展はみられました。視線追跡によってVRの没入感が高まり、フォービエイテッド・レンダリングの技術で映像の質が上がります。フォービエイテッド・レンダリングは、中心視野ほど高解像度で、視野から外れるにしたがって低解像度で描画する技術です。ただ、これはVRの目玉機能とは言い切れません。

HTCはこのほかに、ハイブリッド型のVRヘッドセットVive Cosmosも発表しました。外部センサー不要で、モーショントラッキングコントローラーが付いています。Vive CosmosはPC向けですが、他のプラットフォームもサポートしてスマホで使えるようになる可能性もHTCが示唆しています。同社はCosmosを最もユーザーフレンドリーなVRヘッドセットだとしていますがOculus Questとは違って依然としてケーブル接続が必要です。最終的な発売日はまだ決まっていません。

一方でAR(拡張現実)は、メインストリームに近づきつつあるようです。カナダのスタートアップ「North」などの企業が、見た目が洗練されたARを活用したスマートグラスの開発に取り組んでいます。NorthのARグラスFocalsは、太いアームがあるものの普通のメガネのような見た目で、スケジュールやショートメール、天候、地図などのチェックが行えます。そして、AmazonのAlexaにも対応しています。おそらくマスマーケットにこれまでで最も近付いたARヘッドセットだと思いますが、Northの共同創設者Aaron Grant氏は、ARが大衆市場に受け入れられるにはまだ数年かかるとの見方を示しています。

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