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”ハイパーカジュアル”はアプリランキング上位を席巻するか

Tatsuo Sakamoto
2月 27日, 2018
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2017年は、スマホゲームのターニングポイントでした。多くのユーザー達は、電車の中などで簡単にできる、とても単純な「ハイパーカジュアル」と呼ばれるゲームに夢中になりました。

ヨーロッパに本社を置く Ketchapp や Voodoo、miniclip のような企業のアプリが、App Store および Google Play store の両方で、無料アプリランキングの上位を占めています。彼らの快進撃は今年も続いていくものとみられます。

しかしなぜ、ハイパーカジュアルゲームがアプリ市場で優位を占めているのでしょうか。 Gram Games CEO の Mehmet Ecevit はこのように述べています。「ハイパーカジュアルは、とにかくシンプルだ。インターフェイス、UX、機能、すべてがシンプルだが、その魅力はユーザーを楽しませるだけに留まらない。彼らのロジックやスキルを試すことで、何度でも挑戦させる力を持っている」

ハイパーカジュアルゲームは、ゲームを始める際、難しい説明や会員登録などの複雑な過程を通さず、すぐスタートできます。そのため、一般的なスマホゲームよりもはるかに簡単にユーザーを獲得することができるのです。Mobile Dev Memo の Eric Seufert は、「ハイパーカジュアルゲームの特徴は2点ある。とてもシンプルに、ほぼ広告のみで収益化しているという点、そしてスクリーンショットだけで操作の説明が可能である、本当に簡単なゲームプレイである点だ」と話しています。

このように大変単純で、中毒性のあるゲーム性が、ハイパーカジュアルゲームをチャートの上位に押し上げていると言えるでしょう。単純であれば、誰でもすぐに操作を把握できますし、ゲームの中毒性が高ければ、ユーザーは自然と繰り返しプレイするようになります。

 

ハイパーカジュアルゲームの収益

カジュアル、コア、ハードコアゲームの長期的な開発サイクルに比べ、ハイパーカジュアルゲームは制作がシンプルであるため、1年間に30から40個程度のゲームを開発することができます。そのためハイパーカジュアルゲームの開発者は、アプリを口コミで広げるチャンスを多く得ることができ、ユーザーの反応が良くないものはすぐにサービス終了することができるのです。この戦略は「ポートフォリオ戦略」と呼ばれています。

スマホゲームコンサルタントのJosh Burnsは、「ポートフォリオ戦略は、ストア検索でアプリが見つかりにくいという問題を解決してくれます。ハイパーカジュアルゲームは、その他のスマホゲームに比べ、拡散される可能性が高いためです。また、ゲームを次々と制作する前に、自社アプリ内でクロスプロモーションをすることができるため、リテンション率の低さも解決できます」と述べています。

これらの要素から、ハイパーカジュアルゲームが2018年も成功を続けることが読み取れます。今年の1 月初旬、Voodoo の Twisty Road! がアメリカのアプリストアの無料ゲームアプリランキングで1位にのぼりました。Voodooのゲームアプリは16位、27位、38位にもランクインしていますが、ここから、ハイパーカジュアル特有のポートフォリオ戦略が、ユーザーに受け入れられていることがわかります。

ハイパーカジュアルゲームは、主に広告を通して宣伝し、プレイヤーの参加障壁を下げ、より多くの人々をターゲットとしています。ハイパーカジュアルゲームで適切に収益を出そうとすると、開発者は広告表示の頻度とフォーマットを熟考し、UXを最適化する方法を考える必要があります。一番最適とされるのは、ゲームループ1回または複数回(ステージで失敗したときなど)の後に、スキップ可能なビデオを全画面で表示させることです。

ハイパーカジュアルが今年も成功し続けるためには、デベロッパーは UA(User Acquisition, ユーザー獲得) 戦略を効果的に立てなければなりません。ハイパーカジュアルゲームは広告を基盤としているため、初期から UA キャンペーンの最適化が可能であり、収益につながりやすいモデルです。また、低単価でユーザーを獲得できるため、アプリをスケールさせ、アプリストアのランキング上位にランクインするチャンスがさらに多いと言えます。

 

無料アプリランキングから、売上ランキングへ

ハイパーカジュアルゲームは、2018年にも成功を続けていくでしょう。しかし、スマホゲーム市場は新しい課題に直面しています。アプリ売上ランキング上位への進出です。現在ハイパーカジュアルゲームは、App Store および Google Play Store 両方で、無料アプリランキングの上位を占めていますが、売上アプリランキング50位以内には一つもありません。

ハイパーカジュアルゲームが売上げランキング上位にランクインしない一番の理由は、ポートフォリオ戦略のためでしょう。開発者が多くのゲームをリリースするため、収益が分散してしまい、ランキング上位に入ることが難しい状況となっています。

しかし、2018年は新しいゲームが既存のゲームの位置を脅かし、ハイパーカジュアルゲームがアプリ売上ランキングの上位にのぼる「元年」になるかもしれません。Candy Crush, Clash of Clans, and Game of War のような比較的規模の大きいゲームでも、Toon Blast、Homescapes、Golf ClashHigh School Stories等の新生ゲームからプレッシャーを与えられている状態なのです。

2018年に上位10位のゲームのうち、1つが事実上脱落して新しいゲームが入ってきたら、売上ランキング1-25位の根本的な再編が起きるかもしれない  -Eric Seufert

Eric Seufert の予想では、売上ランキングの上位圏に「根本的な再編」があるとし、長くユーザーに親しまれるゲームのうち大多数が、上位10位圏を維持するため、必死に戦うことになると指摘しています。ただ、スマホゲーム業界で、多くのデベロッパーが持続的に統廃合を続けている現状は、ハイパーカジュアルゲームのデベロッパー達の状況をさらに厳しくしています。ZyngaAristocratNexonのような大企業がスマホゲーム開発社達を吸収すると、小規模デベロッパーの競争はさらに難しくなるということです。

2017年が、ハイパーカジュアルゲームがランキング上位圏に入り始めた年だったとしたら、2018年はこのジャンルが自主的に名声を得はじめる年になるでしょう。ハイパーカジュアルゲームは成長の余地がまだ多くあります。競争が激しくなっていく中で、デベロッパー達がビジネスを拡大し、適応させていく過程も大変興味深いものとなるでしょう。

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