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ハイパーカジュアルゲームの勢いは続く

Tomoya Katagi
7月 22日, 2020

ここ数年、ハイパーカジュアルゲームはゲームデベロッパーの間で常に話題に上っています。突如として登場し、アプリストアのチャートを席巻したジャンルです。ハイパーカジュアルゲームが勢いを増す一方、プレイヤーを保持するには内容が浅すぎるジャンルだとして、一過性の流行だと軽視するような声も一部で聞こえてきました。しかし、デベロッパーの工夫のおかげもあり、ハイパーカジュアルゲームは一時的な流行にとどまらず、勢いを維持しています。

今回は、ハイパーカジュアルゲームのここ数年での躍進を振り返ったうえで、今後の行方を考えてみたいと思います。

 

ハイパーカジュアルゲームの歴史

2014年、無名のデベロッパーが開発した極めてシンプルなゲームの存在でモバイルゲーム業界に激震が走りました。Dong Nguyen 氏が開発した『Flappy Bird』は2013年5月にリリースされましたが、2014年初め頃まではユーザーの間に広まっていませんでした。Nguyen 氏によると、その後、『Flappy Bird』は瞬く間に人気となり、ピーク時にはアプリ内広告による収益が1日当たり5万ドルにまで達したといいます。

その後、多くのデベロッパーやパブリッシャーが、とてもシンプルで気軽にプレイできるという点に大きな可能性を見出し、ハイパーカジュアルゲーム業界が生まれました。こうしたタイプのゲームへの需要があったことは確かですが、ハイパーカジュアルゲームの持続可能性を保持するようなビジネスモデルもあったのでしょうか?その答えは「イエス」です。

 

ハイパーカジュアルゲームの利点

ハイパーカジュアルゲームのデベロッパーをみていて得られる最大の学びの1つは、その開発スピードです。ハイパーカジュアルゲームのデベロッパーはさまざまなコンセプトや試作品のデータを検証し、どのコンセプトに高い可能性が秘められているかを特定します。コアのゲームプレイの仕組みが重視されるシンプルなハイパーカジュアルゲームは、開発過程もシンプルですが、広く受け入れられるよう開発されています。

本質的にシンプルであること、そしてデータドリブンなアプローチを用いることにより、失敗作を生んでしまう前にデベロッパーはテストをすることができ、これがハイパーカジュアルゲームに競争面での優位性をもたらしています。ハイパーカジュアルゲームのデベロッパーは、プレイヤーが求めるものを推測しようとするのではなく、徹底的なテストと素早くプロトタイプを開発することで、ゲームが人気を得られるかを判断します。

テストとイテレーション(反復)で収集したデータを武器に、ハイパーカジュアルゲームを素早く広めることが可能になります。ハイパーカジュアルゲームの CPI(Cost per install: インストール単価)は概して0.50ドル未満で、アプリ内課金で売り上げにつながることが期待できる熱心なファンをターゲットにするような、ほかのゲームジャンルに比べるとかなり低くなります。また、ハイパーカジュアルゲームはすぐに広告収入を形成することができ、その収益をユーザー獲得キャンペーンに投じてゲームをスケールアップしていくことが可能になります。

 

ハイパーカジュアルゲームの課題

ハイパーカジュアルゲーム市場が成熟するにつれ、新たな課題が浮上してきています。ユーザー獲得コストは、まだほかのジャンルに比べると抑えられていますが、全体的に上がりつつあります。また、シンプルな仕組みであるハイパーカジュアルゲームでは、ユーザーが数日ないし数週間で飽きてすぐに離脱してしまう可能性にもデベロッパーは対処する必要があります。

さらに、ハイパーカジュアルゲーム市場は競争が熾烈で、ほかのタイトルを模倣したようなゲームも乱立しています。良いゲームを持っているデベロッパーでも、そのゲームのコアの仕組みを模倣したコピー作品が登場して、そのデベロッパーのユーザー獲得戦略や作品の質が相対的により優れていれば、競争に負けてしまうことがあります。

 

ハイパーカジュアルゲームの躍進は続く

こうしたハイパーカジュアルゲームの秘訣を誰もが知るところとなり、初期のころのような成功を再現するのは難しくなってきています。一方で業界は洗練度を増し、デベロッパーは、プレイヤーをより保持できるような新たなユーザー獲得戦略やゲーム設計に取り組んでいます。

ハイパーカジュアルゲーム業界の大きな変化の1つは、ゲームのクオリティと深みを重視する姿勢へのシフトです。引き続きシンプルでわかりやすいのがこのジャンルの本質ですが、クオリティを高めることはできます。ハイパーカジュアルゲームは、グラフィックの改良やメタゲーム(ゲーム内のミニゲーム)の洗練化などで深みを増し、成熟したプレイヤー層への訴求を高めようとしています。たとえば、コアのゲームプレイとは関係ない仕組みを加えて、プレイヤーが新しいキャラクターやデコレーションなどをプレイ中に獲得できるようにするなどの方法です。

マネタイズ面では、ハイパーカジュアルゲームのデベロッパーはアプリ内ビディングを活用しています。手動で調整されたウォーターフォールに依存するのではなく、各インプレッションへの公平な入札をパブリッシャーに提供するものです。小規模なハイパーカジュアルゲームのデベロッパーでは、MAX by AppLovin のようなアプリ内ビディングサービスの導入により、収益化のモニタリングの手間を省いて生まれた時間をゲーム開発に使うことが可能になっています。

ほかにもデベロッパーの間では、ユーザー獲得や広告制作などの繰り返しの作業を自動化して効率性を高めようとする動きが進んでいます。小規模デベロッパーが時間効率を高めてモバイルゲーム業界の既存企業と競うのを助けるようなツールは増えています。こうした流れは競争の活性化につながり、より素晴らしいゲームがプレイヤーに届くことになります。今後もハイパーカジュアルゲーム業界の成長からは目が離せません。

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